多くのイヤホンやヘッドフォンに採用されているノイズキャンセリングとは、ノイズをデジタル処理によって消滅させる技術だ。
どのように消すかというと、ノイズの音波と真逆の音波を発生させ、ノイズを打ち消すのである。ゆえにキャンセリング(打ち消し)と呼ばれる。
このノイズキャンセリング技術は、もはや完成の域に達し、今度は光学的ノイズキャンセリングの時代が来るといわれている。
我々の目は、ある物体の形や色彩の光波を感覚することにより見るのであるが、光学的ノイズキャンセリングとは、特定の存在の光波に真逆の光波をぶつけることで、その光波を打ち消す、つまり視覚的にその存在を消滅させる技術である。
この技術が実現すれば、我々は目の前から特定の存在を自由に消すことができるようになる。いや、さながら透明人間のように自分の姿を消すことだって可能だ。
それどころか、軍事に応用すれば、目に見えない軍隊を作ることだってできる。このような軍があれば、プーチンも苦戦せずとも済んだことであろう。
現在、光学的ノイズキャンセリング研究にもっとも力を入れているのは中国だが、どうやらすでに実用化段階にある、と信ずべき証拠が図らずも公開された。
それは、先日の中国共産党大会の閉幕式でのことだ。胡錦濤前国家主席が突然、会場から連れ出されるように退出した場面をじっくりみてほしい。
習近平国家主席以外の出席者たちは、胡錦濤前国家主席が退出するというのに、挨拶も敬礼も挙手も目配せもウインクもなく、ただ、あらぬ方向を向いたり、手の先をじっと見つめたり、硬い顔つきで前を見据えたりしているではないか。まったくその姿が見えていないのだ。
習近平国家主席から発せられた真逆の光波により、胡錦濤の姿が光学的に消し去られていたのだと考えることができよう。
なお、我々に胡錦濤が見えるのは、国家主席のノイズキャンセリング機能が我々に届くほど強力ではないからである。今後の開発に期待したい。