苦い文学

I Saw The Light

カントリーにも同名曲があるが、ここで取り上げる I Saw The Light は、トッド・ラングレン(Todd Rundgren)の代表曲だ。

非常に知名度のある曲で、日本でも高橋幸宏や高野寛がカバーしている。

この曲が収められているのは、トッド・ラングレンの 3 枚目のソロ・アルバム Something/Anything?(1972)だ。なお、トッド・ラングレンは現在も音楽活動を続けていて、新しいアルバム Space Force が 10 月 14 日に出たばかりだ。

さて、I Saw The Light は「君の目の中に(愛の)光を見た」というようなラブソングだが、私がこの曲で注目しているのは、曲の後半、間奏のギターソロの直後だ。

But I love you best
It’s not something that I say in jest
(だけど、本当に好きなんだ。ふざけて言えることじゃないよ)

in jest とは「洒落で、ふざけて、冗談で」というような意味だ。Something/Anything? のオリジナル・バージョンでは、この in jest の後に何も付け加えていないが、1972 年(At the BBC 1972-1982, Box O’Todd)、1973 年(Box O’Todd)のライブ・バージョンを聞くと、こんなふうに笑い声が加えられている。

It’s not something that I say in jest ha ha!

つまり、「ふざけてではないよ」と言いつつ、照れ隠しのように「ハハッ」と軽く笑っているのだ。

だが、1978 年(Back to the Bars)や 80 年代以降(The Best of Todd Rundgren Live など)のライブを聴いてほしい。トッドの笑い声がだんだんと「ギャハハ」に近づいてきているではないか。

そして、もっと最近のライブ(2013 年の Todd Rundgren’s Johnson Live、2016 年の Saban Theatre 2016)も、聴いて見てほしい。

「ギャハハ」どころか「ウヒャヒャヒャ!」だ。

もうわかった。完全にふざけているのだ。