ウクライナ侵攻以来、ロシア軍の兵士の敗走が相次いでいる。
その原因はいくつも挙げられている。訓練不足、士気の低さ、不十分な装備、指揮系統の乱れ、兵站の失敗……。
もちろん、兵士が弱いからといって、ロシアを侮ってはならない。なにしろ、核爆弾を何千と所有しているのだ。だが、核が何発あろうと、それで兵が強くなるわけでもないのも確かだ。
実はロシアもその辺りはわかっていて、ウクライナ侵攻前から、強化兵士の導入を進めていたということが明らかになった。
強化兵士というのは、人体に生化学的処置を加えることで、通常の兵士よりもはるかに優れた能力を獲得した兵士のことだ。
ドーピング大国のロシアが本気で取り組んだのだ。その結果たるや、恐ろしいほどだった。
あらゆる点から見て、超人が誕生したのだ。肉体の俊敏性、耐久力、反発力は人間の6倍もあった。感覚も鋭く研ぎ澄まされていた。その聴力は通常の人間の6倍、その視力は8倍あった。真夜中に20キロ先の獲物の動きを難なく捉えることができたのだ。
それだけではない。強化兵士の知能は、外科処置と薬物により、通常の人間の10倍にまで高められていた。戦場のあらゆる情報は、この異常な脳により、瞬時に計算、分析された。強化兵士ひとりで1師団分の威力がある、モスクワはそう評価していた。
強化兵士は、ウクライナ侵攻当日から前線に投入された。その日のうちにキーウを制圧する予定だったのだ。
だが、実際のところ、この作戦がうまくいかなかったのは周知の通りだ。
人間の何倍もの能力をもつ強化兵士は、平和を愛する気持ちも人1倍強かったのだ。
(現在、強化兵士たちはオーガニックな蜂蜜づくりにいそしんでいるという……)