苦い文学

ファクトチェック

インターネット空間での誤情報の氾濫、ヘイトスピーチの跋扈、陰謀論の猖獗に対処するため、政府の肝入りで「日本ファクトチェック協会」が設立された。

当初は、日本に流通するあらゆる情報をファクトチェックの対象とすることになっていたが、新聞やテレビからのマスメディアの情報はチェックの対象から除外されることとなった。これらの機関はすでに独自のファクトチェック体制を備えているからだ。

ついで、政治家から横槍が入り、政府と政党も対象から外された。「大陸から8割」みたいなのをもっと言いたかったのだ。

さらに、ネット上の情報もまたファクトチェックから除外されることになった。それだけの人手の確保ができなかったことが大きい。

「日本ファクトチェック協会」はこれ以外にもさまざまな問題に直面した。ファクトチェックそのものが事実に基づくかのファクトチェックが必要だということになり、ファクトチェックが非常に煩雑になったり、協会の Twitter が、誤情報拡散で炎上したり……。

現在では、協会がファクトチェックするのは、夢だけだ。

「はい、こちら日本ファクトチェック協会です」

「ええと、昨晩、永野芽郁ちゃんから告白される夢を見たんですが、本気っぽかったので、もしかして、本当のことかな、と思って」

「ファクトチェックします……誤情報です」

「では、芽郁ちゃんの頭がパカッと開いて、タヌキが挨拶してきたのも誤情報だと?」

「ええ……」

こんなのだったら、夢占いに行ったほうがマシだと誰もが感じている。