苦い文学

テロリストの孤独

いつの頃からか、私は、自分をこのような無残な境遇に追いやった世界に対して復讐したいと思うようになった。

だが、私には権力も、マシンガンも、猛毒も、殺人バクテリアも何もなかった。あるのはただ孤独だけ。

そう、孤独こそは我が武器なのだ。

孤独な人は、そうでない人に比べて早死にする、というではないか。孤独は、心疾患リスクを押し上げ、認知症のきっかけとなり、心身を衰弱させるというのだ。

私は孤独を伝染病のように蔓延させることで、この世界を破壊しようと考えたのだ。

だが、問題は、この「孤独のテロ」は私一人では不可能だということだ。そこで私は、この世でもっとも悲惨で邪悪なネット空間に果敢に飛び込み、自分と同じような眼をした者たち、つまり胸の奥底に孤独という鋭い匕首を抱えたテロリストたちを召喚したのだ。

そして、今日はこの恐るべき精鋭集団の最初の会議が行われ、我々は「孤独のテロ」の極秘アジェンダについて討議を重ねた。

会議の後は、親睦を深めるためにカラオケに行った。「エリナー・リグビー」をみんなで涙ながらに熱唱した。

来週は、一緒にディズニーランドに行くことも決まった。

「秋には仲良くモミジ狩り」なんて声も上がりだしている。