苦い文学

太陽と受胎

寂れた町のデパートのおもちゃ売り場に大きなガチャガチャ・コーナーができた。子どもたちはみんな大喜びで、親にせがんでは連れて行ってもらうのだった。

恐竜、お化け、小さな人形、手品グッズ、プロペラ付きの飛行機、走る車、不思議な装置……子どもたちは、硬貨とハンドルの一回転によってガチャガチャから転がり出るさまざまなカプセルトイに夢中になった。

だが、町はますます寂れていった。デパートの売り上げも落ちるいっぽうだった。ガチャガチャ・コーナーには相変わらず子どもたちに人気だったが、その肝心の子どももまばらになった。やがて、デパートは閉店した。

デパートは閉鎖されたまま、何年も放置された。新しいスーパーが入るという噂や、市が買い取って庁舎にするという計画が流れたが、いつの間にか立ち消えになった。建物は、錆びつき、雨の染みだらけになり、ゆっくりと朽ちていった。

さまざまな災厄が町を襲い、その度に住人は去った。若者たちが姿を消し、残された老人たちも少しずつ減っていき、ついに最後の一人が息を引き取った。

町はすっかり廃墟となり、崩れそうなデパートの中には、空のガチャガチャがいくつも捨て置かれていた。

ある日のこと、太陽の光がガチャガチャを照らした。すると、ハンドルが回転し、カプセルが転がり出た。

硬貨投入なくして生じたこのカプセルから、我々の住む宇宙が生まれた、と信じられている。