苦い文学

大洗の海

もう何年も前の夏のことだが、在日ビルマ人たちとバスを2台借りて、日帰りで大洗の海に行ったことがある。

みな難民申請中の人々で、東京を離れるのにも入管の許可が必要な人々だった。貸切バス旅行などめったになかったので、誰もができる限りの準備をした。

朝早く高田馬場を出発すると、手作りの朝食が配られ、少し眠ると、みんなでゲームをしたり、歌を歌ったりした。しかも、クーラーボックスには缶ビールや缶酎ハイが詰まっていて、いくらでも出てきた。

そんなわけで、大洗の海に着く頃には、みんないい気分になっていた。いや、いい気分になり過ぎた人もいた。

私たちは海で遊び、これまた自分たちで準備したビルマ料理を昼食として食べ、それからまた海で遊んだ。

私たちが海水浴をしている間、何人かは酒を飲み続けていた。休みとなるともう朝から晩まで飲まずにいられない人がいるのだ。そんなふうに飲んでいた一人がふいに「俺は帰る」と言って大洗駅のほうに行ってしまった。

その後、帰り支度を始めた私たちは、一人いないということに気がつき、海で溺れているのではないかと探し回った。