苦い文学

ウェイティング・リスト

休日のお昼どき、私は妻と子とともにデパートのレストランで順番を待っていた。ウェイティング・リストに記入した時からずいぶんたち、次に呼ばれるのは私たちのはずだった。

店員が出てきて、私の苗字を呼んだ。私が壁際の丸椅子から立ち上がると、店員はこう言った。

「先に1名様をご案内してよろしいでしょうか」

私がうなずくと店員はその一人客の名を呼び、店に入れた。しばらくすると、また店員が出てきて、私に言った。

「先に2名様をご案内してよろしいでしょうか」

私は答えるのに躊躇したが、その間に隣に座った妻が承諾した。二人の客が談笑しながら店内に向かった。

イライラしてきた私は立ち上がり「トイレに行ってくるから、呼ばれたら先に店に入ってて」と言ってその場を離れた。

私はゆっくりと歩き、2階下のトイレに向かい、ゆっくりと済まし、そして商品を見ながらゆっくりと店に戻った。

妻は同じ場所に座っていた。しかも、わたしたちの後に並んでいた人々は一人もいなくなっていたのだ。

驚いて妻に尋ねると、「お店の人が……」と涙目で言った。子どもは妻にもたれかかって寝ていた。

「全員先に案内しやがったな!」

腹を立てた私が怒鳴ると、子どもが目を覚まして泣き出した。それにかまわず店に乗り込もうとする私を、妻は「きっと次だから」と引き留めた。


……それから、どれくらいの時が過ぎただろうか。妻の言葉にもかかわらず、その「次」はやってこなかった。幾人もの人々が私を追い越していった。誰かが連れ去ったのか、妻と子ももういない。

今も私は待ち続けている。