苦い文学

イヌディペンデンス

夕方涼しくなったので公園で考えごとをしていたら、散歩に連れられてきたイヌたちの会話が聞こえてきた(今月に入ってこれで2度目だ)。

毛並みのいいの「まったく、最近おかしな奴らが増えてるな。生活保護犬だなんだって、名前からして情けねえ」

背の低い茶色の「ああ、あのどこの馬の骨ともわからん連中か。あんなのと我々を一緒にしてもらっちゃ迷惑千万だ」

白くてフサフサしたの「まったくだ」

モジャモジャの「いや、そうはいっても、それぞれ事情があるのだ。すきでそうなったわけではない」

イヌたち「(一斉にうなり吠える)」

毛並みのいいの「我々の払った税金で、仕事もせずに暮らしている怠け者だ」

背の低い茶色の「もちろん、本当に困っているのなら生活保護犬だってしょうがないが、聞けば、ベンツを乗り回してるそうじゃないか」

毛並みのいいの「パチンコに入り浸ってる手合いもいるってよ。不正受給が多すぎる」

白くてフサフサしたの「まったくだ」

モジャモジャの「だからといって、制度自体を全否定することはできないと思うがね」

イヌたち「(一斉にうなり吠える)」

毛並みのいいの「働いて、自分でおまんまを稼いでこそ、一人前なんだ。養ってもらうなんて恥だと思わなきゃ」

背の低い茶色の「もし俺が、あんな社会のお荷物になったら、とっくに自殺してるね」

白くてフサフサしたの「まったくだ」

モジャモジャの「だが、我々だって、人間に養ってもらっているではないか」

毛並みのいいの「人間が養っているだと? 逆だ、逆だよ! 我々のした糞を次から次へと盗み取っていく連中だぞ。人間がもしそれを食べていないとしたら一体どうしていると思うのかね? まさか捨てているとでも?」

イヌたちは一斉に大笑いを始め、飼い主たちがリードを引っ張って、イヌたちを引き離すまでそれは続いたのであった。