苦い文学

路上ライブ

駅前の広場を歩いていたら、音楽が聞こえてきた。見ると、二人組の男が路上ライブをやっているのだった。ひとりはギターで、もうひとりはマイクを握っている。

だが、ギターの音も、歌声も見事に外れていた。私はかえって興味を感じて、聴衆の輪に加わった。

曲はオリジナルかどうかわからなかったが、どこかで聴いたようなメロディに、どこかで聴いたようなフレーズが散りばめられていた。

やがて、歌が終わり、歌手は聴衆に語りかけた。

「ありがとう。僕たち『かぼす』が路上ライブを初めてこれでもう1年?ですか。『路上から武道館を目指します』をキャッチフレーズにがんばらさせていただいてますが、この夢を早く実現したいな、と思って。一生懸命考えたんです。どうしたらいいかって。そしたら、いい案が思い浮かびました。これなら絶対に夢、叶えられるって。それをみなさんと共有できたらと思って」

聴衆の中から拍手が湧いた。

「『かぼす』は、今夜から『元首相』に改名します!」

そのとき、ギターが後ろからチャカチャーンと合図を送った。

「僕たちは、路上から武道館を目指します! では次の曲聴いてください!」

私は家でやることを思い出したので、足早に立ち去った。