苦い文学

規格違い

ずっとずっと遠い未来、ある聖なる存在たちが魂を開発した。

魂とはたとえて言うならば数字であり、ひとつの数字は他のあらゆる数字の存在を前提とする。それゆえ、ひとつの魂が存在するときには、あらゆる魂、過去のものを含めた魂もまた存在しなくてはならない。

そこで、聖なる存在たちは、時間を遡り、過去に生きたあらゆる生物の魂を復元することにした。生物たちの死の瞬間に立ちあい、魂をひとつひとつ創出していったのだ。

創出のさいには、死にゆく生物の脳に蓄えられた全記憶を特殊な機器を用いて高速再生しなくてはならない。これは須臾の間の出来事だが、そのさいに、死にゆく生物自身もまた自分の全記憶を追体験する。

この高速再生を、人間は走馬灯と表現しているのである。

私が死んだときも、聖なる存在たちが駆けつけて、私の魂を作り出すべく作業にとりかかった。だが、どうしても私の記憶を再生することができなかった。

聖なる存在たちは口々に言った。「これは VHS ではない。ベータマックスだ」

私は息を吹き返し、今に至るまで死なずに生きている。