年寄りが、初対面の人に自分の歳を当てさせて、自分が90何歳なのを知らせて驚かしたり、あるいは、聞かれてないのにまず自分の歳のことを話して感心させたりして、本人はいたくご満悦、といった光景がたまにみられるが、年を取るのがそんなに大したことなのか。
いや、大したことに違いないのだが、そんなに自慢げに言うことなのか。
そもそも、我々の社会はいたずらに自慢することをよしとしない社会だが、これら高齢者は、その社会をそれこそ何十年も生きてきたにもかかわらず、ある年齢に達した途端、自分の年齢の自慢をためらわなくなるのだ。
しかも、これらの老人たちは、その長い年月の間にどれだけ立派なことをしてきたかしれないのに、そんなことなどお構いなしで、自分の人生をすっかりその二桁か三桁の数字に変換してしまう。
いったいこれはどういうことなのか。私は考えに考え、ある一つの答えに到達した。
つまり、自分の年齢を自慢するような人だけが、長生きするのだ。
考えてみてほしい。「こんなに年取って申し訳ありません」「生きていてすいません」「馬齢を重ねまして……」「恥さらしな人生を生きております……」などといつも言っているような人が、長生きなどできようか?
これらの言葉は、口にするたびにその人の寿命を奪っていく魔の言葉なのだ。それこそ月単位で、だ。
そんなわけで長生きをしたい人は、これらの言葉を避けるべきである。
そのかわり、自分の誕生日が来るたびにウキウキしたり、自分が人より年上であるだけで得意になったり、そんな心持ちでいるようによろしく努めるべきなのだ。