苦い文学

マッサージ

以前、中国の雲南省で行われたカチン民族の祭りに行った帰り、私は在日カチン人ともう一人の日本人とで、ホテルに泊まった。

そのカチン人は中国語も話せる。ホテルのフロントには若い女性がいて、チェックインのとき、彼女にこう聞いた。

「このあたりにマッサージ店はないか」

私は彼とビルマとタイにも一緒に行ったことがあるが、彼はいつもマッサージを頼む。日本のマッサージは高いので、これが彼の楽しみの一つなのだ。

だが、受付の返事は「ない」。

「そんなはずはない」としつこく食い下がるが「ない」の一点張りだ。もしかしたら性的なマッサージと勘違いしていたのかもしれない。それか、共産党が急にマッサージ禁止のお触れ書きを出したか、だ。結局彼は諦め、我々は与えられた鍵を持ってばらばらに部屋に落ち着いた。

すると緊急事態が起きた。何かは今は書かないが、私はどうしてもこのカチン人と話をしなくてはならなくなった。一刻を争うのだ。だが、彼の部屋がどこにあるかわからなかった。

私は急いで受付に行った。中国語ができない私は、先ほどの若い女性に中国語らしき漢字をいくつも書いて、必死に伝えようとした。

彼女も困った様子で私の相手をしていたが、やがてピーンときた顔をした。そして彼女は、「お前が探しているのはこれだな!」と言わんばかりの顔つきで、パソコンに入力した文字を見せた。

[按摩(アンモー)]

「ちがう! アンモーちがう!」と私は絶句したが、逆に笑ってしまった。