私の知っている人で、おとなしく人が良さそうに見えるのだが、奇妙な点があった。
同僚の若い女性の世話につきまとうのだ。
待ち伏せして話しかけたりするのだが、何を話すかというと、親切にアドバイスしている。毎日何かメールを書いてくる。どうぞ使ってくださいという感じでものをあげたりしている。
女性の方からするとそうとう不快に違いないが、うまく拒絶することもできない。というのも、相手はまさに親切心からしているだけで、そこに下心はまったくないように見えるのだ。
これがもし、この男が性的な事柄を仄めかしたりでもすれば、これはもうセクハラだ。少なくとも、この男を追っ払う口実になる。だが、そんなそぶりはまったく見せない。
この男は親切で素朴な人間なのだろうか。それとも、巧妙に下心を隠している卑劣な人間なのだろうか。
私はしばしばこのテーマについて考えたが、最近では、この男の内部には「セクハラ」という別種の生命体が宿っていて、その生命体が生き延びるために取っている方策が、この男の奇妙なふるまいとなって現れているのでは、と考えるようになった(これは本人が無自覚なのもよく説明する)。
現代では容易に判別できるハラスメントはすぐに排除されてしまうから、わかりにくく、微妙で、それでいてダメージは大きいというように、巧妙化しなくては、ハラスメントは生き残れないのだ。