平助が短期留学していた時のことだ。ひと月の語学研修の終わりに、希望者でバス旅行に行くことになった。古代の遺跡や砂漠を旅して回るのだ。
ツアーにはいろいろな国の人が参加していたが、その中に韓国人の女の子がいた。
別に親しいわけではなかったが、ある晩、彼女が指につけた指輪を見せて、街でいろいろな男に言い寄られるのを避けるためだ、と平助に説明してくれた。
平助はとてもよいアイディアだと感心したが、その魔法の指輪は、同行者のドイツ人の男は追っ払えないということが明らかになった。
そのドイツ人は平助よりも年上で、休暇をとってこの国で勉強していたのだが、あるとき、缶ビール片手に、彼女のところにやってきて、こんなことを言ったのだ。
「どうして犬を食べるのだ」
韓国の女の子は困った顔をした。
「どうして犬を食べるのか」
ドイツ人はもう一度言って、バカにしたように笑った。
平助はこの様子を見て「犬ではなく、ユダヤ人を食べていたらドイツ人の態度もまた違ったものだったろう」と思った。