苦い文学

脱擬人化

動物の行動を調べている研究者の話を聞いたら、動物を擬人化してはいけない、ということを言っていた。

それは動物の行動を勝手に人間になぞらえているだけだから、ということのようだ。

よく「犬が笑う」という人がいるが、それはあくまでも人間が犬を擬人化しているだけであって、実際には犬が「人間のように笑っている」わけではないのだ。

これだけならまだいいが、その動物の研究者はこんなことも言っていた。

「人間を擬人化してはいけない」

人間のことを人間として扱ってなにが悪い、なにをバカげたことを、と思ったが、よくよく考えてみるとそうではない。

人間を擬人化するとは、人間だけを他の動物から切り離して特別な地位に置くことであるから、そうしてしまうと、人間を動物と同じ土俵で扱ったり、動物から人間への進化の道筋を辿ったりすることが、できなくなってしまう、ということなのだろう。

そうした理屈はわかるものの、人間を擬人化しないで捉えるとは、具体的にはどういうことだろうか。私は自分の生活を観察して、脱擬人化して記録しようと試みた。

朝起きて、腹が減ると飯を食べる。痒いところが生じると掻く。眠くなると寝る。犬の生活とあまり違いのないことがわかった。