苦い文学

腹の底から笑う会(入門編)

毎日つらいことや苦しいことが多すぎて、私はまったく笑わなくなってしまった。

朝から晩まで苦虫を嚙みつぶしたような顔をしていて、もうその虫だけでお腹いっぱいなのだ。

笑う門には福来るというが、笑わぬ門には死あるのみだ。生きるためには笑わねばならない。そんなわけで、私は「腹の底から笑う会」に入会することにした。本気で腹の底から笑うつもりなのだ。

会の集会は週に一回。会員たちは、みな腹の底から笑わんかなの姿勢でやってきて、腹の底から笑って帰っていくのだった。

なかでも見事な笑いっぷりをみせてくれるのは、会長だ。その笑いたるや、豪快、愉快、痛快の三快の揃い踏みで、聞いてるだけでスカッとする。腹の底から笑うとはまさしくこれなりと、私は感心したのであった。

会長はいつもにこにこ朗らかで、この世に生きるのが楽しくてしょうがないという様子。とくに、子どもたちに出会ったときの会長の喜びようといったらなく、そのうれしさのあまり、いちだんと素晴らしい笑い声を響かせる。会長が生み出しうるもっとも美しく、もっとも楽しく、もっとも心揺さぶる笑い声といえた。

「私もこんな朗らかな人間になりたい。苦虫よ、さらば」と私はこの会長を師として、同じように笑おうと努力した。だが、そうやって力めば力むほど、腹の奥底から苦味が込み上げてきて、すべての笑いを枯死させるのだった。