家に帰ろうと、私は右に避け、左に避け、いく度も通行人をやり過ごしたが、その度に、新たな、そしてよりいっそう奇怪な顔つきの存在が現れるのだった。
もう、ずいぶん前から、一歩も進んでいないように思えた。私はこの状況から抜け出そうと、方向転換を繰り返し、もはやどちらが家の方向なのかもわからなくなった。私は疲労困憊し、絶望し、ついにへたり込んだ。
道に座って周囲を眺める。まったく見知らぬ場所だ。そして、私の周囲では、あらゆる方向から人々がやってきては通り過ぎていくのだ。
私は空腹を感じていた。喉の渇きも。だが、どうすればいいだろうか?
立ちあがる気力もなく、私は夜が来るのを待ち続けた。というのも、そうなれば、人もいなくなるだろうから。
だが、夜になっても、真夜中になっても、人通りが途絶えることはなかった。やがて、夜が明け、絶えざる通行者に翻弄される私の上に太陽が昇った。
焼けるような日差しの中、飢えと渇きがもう絶え難いほどになった。私は思わず通行人にすがりついた。助けを乞うた。泣きついた。だが、奇怪な存在たちは、私を蹴飛ばし、罵り、あるいはただ無視するだけなのだ。
もう、今や家を出てどれだけ経ったのかもわからない。体も動かず、アスファルトの上で横になるだけ。私はしばしば意識を失うようになった。死が近づいているのだ。
この恐ろしい雑踏の中で、私は考える。もしかしたら、自分には道は向いていなかったのではないか、と。だが、もう遅い。いくら泣いて
この手記を所持する遺体が発見されたのは、渋谷スクランブル交差点のただ中であった。白昼いつどのようにして、この遺体が運び込まれたのか、現在、警察が捜査を行なっている。