苦い文学

老害

久しぶりに居酒屋に行って、一人飲んでいたら、背後の席にやってきた二人連れの客がうるさく話し出した。

迷惑極まりないその大声は、背を向けたままの私の耳に容赦なく入ってきた。しかも、その連中の話ときたら、まったく聞くに耐えなかった。

「最近の老人ってのは、なんかもう威張っちゃっててさ、俺なんか思うわけよ、お前ら、勝手に年取っただけだろ、それでなんで偉そうにしてんのって」と、一番声が大きなヤツががなりたてる。

「老害、老害ね」とツレが合いの手を入れる。

「そう、老害。この前なんか、俺、あったま来ちゃってさ。仕事でさ電車に乗ってたの。ちょっと込んでてさ。俺は座ってたんだけど、そしたら、途中で乗ってきた爺がさ、俺の前に立つの。いや、俺だって、いつも席を譲るよ。はいどうぞって。でもさ、お前ら若い連中は譲るのが当然、だなんてツラして立たれたら、そら譲れんべ。俺はあくまでもさ、無視してやったよ。だいたい社会が老害どもを甘やかしすぎなんだよ!」

「それな」

「ほんっと! だからさ、俺は老害には徹底抗戦なの! 老人だからって席を譲らなくちゃいけないなんて決まりはないんだからさ。それに、文句を言うならJRに言ってほしいね。優先席? バカにすんな。みんなが座れるだけ、本数を走らせろよ! 席の不足を俺達若いのに押し付けんなっての」

私はこの不遜な発言を聞きながら、激しい怒りを感じた。この若造どもはいったいどんなツラをしているというのか。ひとつ睨みつけてやるか、とばかりに振り返ると、そこには2人の酔った老人が座っていたのだ。

年のころは、後期高齢者、いや、それどころじゃない、前期死者だ。

これが高齢化社会なのだ。