地獄の運営団体が記者会見を行い、今後は、善人のみが地獄に落ちることになったと明らかにした。
今まで悪人のみを受け入れてきた地獄にとって大きな転換だ。
この真逆の方向転換について、地獄の運営団体は「悪人を地獄に落とすよりも、善人を地獄に落とすほうが、社会がより良くなることがわかった」と述べ、以下の3点にわたりその理由を説明した。
① 悪人はずる賢く、逃げ足もはやい。それゆえ、悪人を捕まえるのには多大な費用と労力が必要となる。いっぽう、善人は、圧倒的に捕まえやすく、費用もほとんどかからない。そして、捕まえられた善人の中には、一定数の悪人が善人のふりをして身を潜めている。すなわち、善人を大量に逮捕すれば、悪人を単独で捕まえるよりも、容易にしかも安価に悪人を捕まえることができる。
② 善人がいなければ、悪人を捕まえるのはもっと容易だったはずである。すなわち、善人は、悪人の逮捕を妨害しているのであり、それゆえ、善人であること自体、地獄に値する罪であると考えられる。
③ 善人を地獄に落とすことは、悪人が悪をなすのを抑止する効果がある。悪人だけを地獄に落としていた時代は、悪人は悪知恵を働かせることによって、うまく逃れることができた。そのため、地獄の犯罪抑止効果はゼロに等しかった。しかし、善人でも地獄に落ちるとなれば、悪知恵があろうとなかろうと、どの悪人にも地獄に落ちる可能性が生じる。その結果、地獄の刑罰への恐れが生まれ、その恐れが犯罪抑止につながる。
会見の終わりに、地獄の運営団体は、鬼たちの公募で決まった地獄の新キャッチフレーズ「善人なおもて地獄に落つ、いわんや悪人をや」を発表した。