苦い文学

未来におけるトランスペアランシー

過去に戻るための方法を、未来の世界で探し続ける私は、とある巨大な街にたどり着いた。

その街の城門から中を眺めた私は、異様な光景に驚かずにはいられなかった。

なにしろ行き交う住民ことごとくやせ細り、やつれているのだ。そればかりでなく、頭はコブだらけ、身体は青あざと打身でぼろぼろというありさまだ。

まるで、とんでもない災厄がこの街の住人を襲ったかのようだった。そして、私がなおも眺めていると、さらに異様な展開がはじまった。

不意に人々が打ちのめされ、なぎ倒されたのである。ある者はぴょんと飛び上がり、ある者は地面に押しつけられた。あたかも、見えざる存在に、すき放題に殴られ、いたぶられ、辱められているかのようであった。この奇怪な現象が、街の住民たちのアザや打撲の原因なのは間違いなかった。

驚愕した私が逃げ出そうとしたその瞬間、宙に吹き飛ばされた一人の男が、城門を飛び出て、私の目の前に転がり落ちてきた。

男は苦しそうに呻き、ふらふらと立ち上がった。そして、血だらけの体を細い両足で支えながら、街に戻ろうとした。私は思わず男を引き留め、尋ねずにはいられなかった。

「いったい、この街の様子はどういうことでしょうか。誰もが四六時中、見えない手にすき勝手に殴られているようではありませんか」

すると、男は歯の抜けた口を開いて、か細い声で答えた。

「旅のおかたよ、この街はかつて腐敗した政府が支配していたのです。私たち市民は、腐敗を一掃するために、政府の透明性を高める取り組みを進めたのですが、進め過ぎて、政府まで透明になってしまったのです。それ以来、見えないのをいいことにやりたい放題……」

そのとき、見えざる手が男に見事なアッパーカットを決めた。

街の奥の方へと飛ばされていく男を尻目に、私は再び旅をはじめた。