苦い文学

再び町中華にて

近所の町中華で、ひとりラーメンを啜っていると、でっぷりと太った二人の男たちが入ってきた。

私はすぐに気がついた。ダイエット中のあの社長だ。

二人はいつかと同じように奥のテーブルに座り、やはり以前と同じように、次々と注文を始めた。そして、天津飯や餃子や唐揚げやサンマーメンや回鍋肉やニラレバが運ばれてくるたびに、社長は一口だけ食べて、残りをもうひとりの太った男に押しつけ平らげさせた。これが社長のダイエット法なのだ。

私はこっそりとその様子を眺めていたのだが、やがてあることに気がついた。社長の連れが以前とは別の人間なのだ。

彼もやはり同じように太り、外国人のようだった。だが、違う男だった。いや男ではない、まだ少年だ。その少年が丸くつややかな頬を動かしながら、大量の料理を流し込んでいるのだった。

好奇心に突き動かされた私は、近寄ってその社長に尋ねた。

「以前、この店で社長のお姿をお見かけし、感銘を受けた者にてございます。お見受けしたところ、お連れのかたが変わられたようですが、いかなる理由によりますものでございましょうか」

「亡くなったのです」と社長は悲痛な表情を浮かべた。「だが、今は彼の、この息子が立派に跡を継いで、私のダイエットの手伝いをしてくれているのだよ。なあ、ジョナサンよ」

ジョナサンはあどけない顔つきでうなずいた。

私が「実に立派な食べっぷり、まっこと胸のすくようでございます」と感心してみせると、社長は自慢げに言った。

「異国で身寄りのない不憫な身の上ながら、こうしてなに不自由なく飲み食いできるのも、私のおかげなのだ」

と、こう話している間にも、料理は続々と運ばれてきた。そして社長は相変わらず一口だけ食べては、少年の前に置くのであった。

しかし、さすがに少年も満腹になってきたようだった。その顔には、ちょうど以前私が彼の父に見たのと同じような苦悶の表情が浮かんだ。だが、社長はかまわず少年の前に皿を置き続けた。

「どうした。食が進まないのか。お前の親父はもっと食べたぞ。お前が食べないと俺は痩せられないのだ」

口に食べ物を詰め込んだ少年は目を白黒させ、その額に脂汗が浮かんだ。

「がんばれ、応援しているぞ」

社長は内ポケットから一枚の写真を取り出して、少年の目の前に置いた。

「これを見てがんばれ」

その写真には、少年と、彼を愛おしげに抱きしめる父親の姿があった。二人ともスラリとした体型だった。