苦い文学

愛国めし

次に私たちが訪れたのは、千代田区にある和食処「食いてしやまん」。

なんでも変わった愛国めしがあるとか。さっそく入ってみることにした。

席につき、メニューを開いた。

「どれどれ……、マグロ丼、鉄火丼、サーモン丼、どれも普通だな……あっこれか、開戦丼!」

イクラが山盛りの丼の写真が添えてある。私はメニューを連れに差し出した。

「見てよ。ここに開戦丼の説明もある。『ハワイのポキ丼にイクラを真珠のようにちりばめました! 一口食べれば、リメンバー・パールハーバー、二口食べれば、ウメンダー・パールハーバー!』って」

だが連れは冷静だった。

「だけど、『ちりばめた』ってのがちょっと気になるな。もしかしたら、写真と大違いで、イクラが数えるほどしかない可能性もあるぞ」

連れは私からメニューを奪い、じっくり見た。

「ほら! 間違いだ。このイクラが山盛りのは、開戦丼じゃない。『北方領丼』だ」

メニューを見ると「不法占拠したイクラどもを食べ尽くせ!」と書いてある。

「おお、それそれ! それに決まり!」

店員を呼ぶと「はい、お待たせしやした」と駆けつけてきた。

「あのね、この北方領丼、ください」

「は? ホッポー……?」

「北方領丼、これ、このメニューにあるヤツ」

「あっ、かしこまりやした! (店の奥のほうに向かって)プーチン丼ひとつ入りやした!」

「どっ、丼も実効支配!?」

私たちは領土返還への厳しい道のりを思いながら、イクラを1粒1粒噛みしめたのであった。