苦い文学

あなたに訴状を届けたくて

企業などに訴状を届けるのは「特別送達」と呼ばれるが、これを担当する郵便配達員はつねに危険と隣りあわせだ。

訴えられた企業は、あの手この手を使って、郵便配達員を妨害するからだ。

なんとしても訴状を受け取りたくないのだ。永遠にあの言葉を繰り返していたいのだ。

「訴状が届いていないのでコメントできない」と。

企業側の妨害はさまざまだ。ならず者を配達員にけしかけることもある。郵便局に工作員を送り込んで騒動を起こすこともある。ニセ配達員でかく乱させて訴状を奪おうとしたり、色仕掛けで骨抜きにすることなど日常茶飯事だ。刺客を放つことだってある。

もちろん、日本郵便だって負けてはいない。訴状を届ける特別送達配達員は精鋭ぞろいだ。全員、イーサン・ハントみたいなのだ。

ときには、訴状の奪い合いが日本を飛びだすこともある。アマゾンの密林での暗闘、シベリアの氷上での激戦、宇宙ステーションでの決闘などだ。

宇宙ステーションでは配達員はあやうく訴状ごと宇宙の藻くずとなるところだった。だが、なんとか敵を打ち破ると、危ういところでポッドで脱出したのだ(その直後に宇宙ステーションは爆発だ)。

大気圏を通過したポッドが千葉沖に無事着水すると、待ちかまえていたヘリに乗り込む。そして、都内でバイクに飛び乗ると、宛先の企業に訴状を届けたのだ(その企業は訴状を受け取った瞬間、建物ごと崩壊した)。

なお、訴状の配達員はどんなときでも必ず相手に届けることになっている。なので「ご不在連絡票」は決して持たないそうだ。