日本語教科書のスタンダードといえば『みんなの日本語』だが、日本語学習者の多様化につれ、それぞれ独自の特徴をもつ日本語教科書が開発されるようになった。
例えば、『いろどり』(国際交流基金日本語国際センター)は、留学生向けというよりも、日本で生活する人が「できること」を増やすのを目的とする教科書だ。これは無料でダウンロードでき、地域の日本語教室や、ボランティアが自由に活用できる。
最近公刊された教科書『イエス、マスター』もまた独自の特徴を持っている。この教科書は日本に連れてこられた外国人奴隷を対象としたもので、「できること」よりも「しつけ」を重視している。例えば、第4課はこんな具合だ。
第4課 それ、渡せ。(お仕置き場面での会話を学びます。)
田中さん:こら、お前、また愚図愚図しやがって。
奴隷:イエス、マスター
田中さん:はて、どうしようもない奴よ。お前を見ているだけで俺は苛々するのだ。
奴隷:イエス、マスター
田中さん:ここはひとつ懲らしめてくれようか。
奴隷:イエス、マスター
田中さん:おい、棚にスタンガンがあるだろ。
奴隷:イエス、マスター
田中さん:それ、渡せ。
奴隷:イエス、マスター
田中さん:やあ、覚悟しろ。
奴隷:イエス、マスター
このように「奴隷」と「田中さん」との一方向的な会話を通じて、自然な日本語が身につくようになっている。文法的な説明はまったくないが、これは「奴隷に文法は必要ない」という最新の第二言語習得理論に基づくものだ。
興味のある方は、「日本奴隷しつけ基金」のホームページを参照してほしい。無料でダウンロードできるが、国際人権監視団体から若干の制裁が科せられる。