苦い文学

永遠の時刻表の輝き

JR念浜線の傘上駅と青骨駅の間で、電車が停車した。線路内に人が立ち入ったのだという。「安全の確認がとれるまでしばらくお待ちください」とのアナウンスがあった。

木曜日の午後で、暖かい日差しが車窓から差し込んでいた。私の車両には数人の乗客がいたが、アナウンスを聞くと「またか」という顔つきをし、うつむいた。やがて、誰もがまどろみはじめたようだった。

ただ私をのぞいては。

というのも、かねてから感じていた便意が強まりつつあったから。しかも、この電車にはトイレがないのだった。悲惨な事態への予感の中でうたた寝できるほど、私は勇敢ではなかった。

私は線路への侵入者を憎み、空想の銃で何度も狙い撃ちした。しかし、便意がそのような放埒な空想をも許さぬほど差し迫ってくると、私は身もだえしながら、ひたすらに堪えた。やがて、苦しみは最高潮に達し、私は朦朧としだした。

そして、そのおぼろげな意識の中で私は見たのだった。線路の上をゆっくりと移動する異様な存在を。

それは人間の形をしていた。だが、人間なのはそれだけだった。それはただただ光り輝いていた。太陽がその表面で千々に乱れていた。まるでダイヤモンドでできた人間のようだった。

そのとき、車掌や運転手、駅員からなる一群の人々が現れた。彼らはそのダイヤモンド人に飛びかかった。だが、そいつは、閃光を放ちながらすり抜け、彼らの手の届かないところに逃げ去った。人々は騒ぎ立てながらなんどもそいつに掴みかかるのだが、そのたびにするりと逃げられるのだった。

と、不意に私を猛烈な便意が襲い、最後の瞬間へと駆り立てた。崖から落ちまいと思わずうつむいた私の視界の端で、光が激しくほとばしった。

私の記憶はそこから途絶える。青骨駅のトイレで水洗レバーをひねる時までまったく覚えていないのだ。

私は思うのだ。もしかしたら、あのダイヤモンド人は便意が見せた幻だったのかもしれない、と。

しかし、別の解釈もありうる。車掌と運転手たちはあのダイヤモンド人を本当に捕まえようとしていたのだ。おそらくそれは途方もない富をもたらすに違いない。「線路に人が立ち入った」というのは、ダイヤモンド人の出現を意味する暗号であり、電車を停止させ、「狩り」を始める合図となっているのだろう。

しかし、車掌も、運転手も、駅員も、なんと呆れた連中だろうか。乗客のことなどそっちのけで、考えることといえば「ダイヤ」のことばかりなのだから。