ある世界的有名人が、いまこそ地球の平和のためになにかをするべきだと考えた。
さまざまな案が出された。国際的平和団体への寄付、難民支援、平和教育活動への参加……。これらの活動にはもちろん意味があったが、世界的有名人の彼にとっては地味でありきたりに思えた。
すると、ある人が「宇宙に行って世界全体に平和をアピールしたら」と提案した。彼はそれに乗った。
宇宙へ行くための準備が始まった。とんでもない費用がかかったが、協力者やら、スポンサーやら、クラウドファンディングやらでなんとか賄うことができた。
そして、彼を乗せたロケットは宇宙に飛び立ち、宇宙ステーションに無事到着した。
地球は青く輝いていた。世界配信の準備が整い、彼はこの美しい星を前に、全人類に向けて語りかけた。
「みなさん、この地球を見てください。宇宙から見れば国境など見えないのです。ただ美しい地球があるだけです。国境などたいして重要ではありません。ただちに戦争をやめましょう。国境をめぐって争うなど、なんと愚かなことでしょうか」
彼は不意に黙った。地球をしげしげと眺める。その顔に驚きの表情が浮かんだ。
「いや、宇宙から地球を見れば、国境だけでなく、人間も見えませんね……」