同志イムチェクの夫婦仲の悪さは有名だった。
しかも、その妻ときたら、とんだおしゃべりだった。出かける先々で、党の幹部である夫の悪口を喋々するのだからたまらない。さしも辣腕のイムチェクもこれには困ったが、家族のことなのでどうすることもできなかった。
さて、「夏の夜革命」後、同志イムチェクは党の実権を握ると、強権を振るって政敵を次々と追放していった。
これに危機感を抱いたのが青年革命派のバーコフ政治局長だった。彼はある会議で敢然と立ち上がり、同志イムチェクを非民主主義的な裏切り者だと公然と批判したのであった。バーコフはさらに続けた。
「同志の細君は、聞くところによれば、さんざん同志の悪口を言いふらしているというではないか。このような荒んだ愛のない家庭の主が、我が国を正しく導けるとはとうてい思えないのである!」
これに対して同志イムチェクは、出席者のあいだから漏れ聞こえる失笑の中、静かに言い返した。
「我が家庭に愛のないのは認めよう」
そして、次のように続けた。
「だが、我が家庭がきわめて民主的であることもまた明白である。なぜなら、同志バーコフがその意図とは逆に証言してくれたように、そこでは言論の自由が完全に保障されているからである!」