日本に暮らす2人のカチン人がいた。
2人とも、難民認定申請をして在留許可を得ることができた。最初は特定活動ビザだったが、しばらくして定住者ビザに変更した。
やがて生活も安定してきたので、永住者ビザの申請を考えはじめた。
片方は、申請手続きをある行政書士に依頼した。もう片方もその行政書士が良いと誘われたが、費用が高かった。なので、以前から知っている別の行政書士に頼むことにした。安くやってくれるというのだ。
そして、2人とも、永住者申請の身元保証人を私に頼んできた。
高いほうの行政書士は、なかなか偏屈な人だった。定年後に資格を取って始めたのだという。私は身元保証人の書類を送ればよかったのだが、なぜか上野駅のスターバックスに呼び出された。
引き受けるからには、身元保証人もちゃんとしている人がどうか直接会って確認する、とその行政書士が言い張ったのだ。カチン人は「なにもそんなことまでしなくていいのに」とすまなそうに私に言った。
これに対し安いほうの行政書士は、違う取り組み方だった。身元保証人の書類を送るようにと、私に封書を送ってきたが、その封筒の中には返信用の封筒も切手も入っていないのだった。これが安さの秘密に違いない、と私は見抜いた。
身銭を切って書類を送りたくなかったので、そのカチン人に直接渡しに行った。彼は、いつ電話しても行政書士がつかまらないので困っている、と私にこぼした。
さて、この2つの永住者申請の結果はどうなったであろうか。ご想像の通り、成功したのは高いほうの行政書士だ。