苦い文学

時間よ停まれ

昨年の3月27日、渋谷で行われたデモに参加した。

デモは、ビルマの軍事政権に抗議する目的のもので、たくさんのビルマの人々が集まった。

デモの出発点は国連大学本部ビルで、青山通り、表参道、明治通り、渋谷駅前、宮益坂から国連大学本部ビルへとぐるりと一周するのだ。

私はカレンの人に誘われたので、カレンのグループとともにデモ隊に交じって歩きはじめた。

素晴らしい天気だった。普段は歩けない公道を歩くのはとても楽しい。私は「趣味としてのデモ」を提唱しているが、あまり耳を傾ける人はいない。きっと警備や交通整理に追われる警察官や公安の人々に迷惑だからだろう。

ビルマの人が拡声器でシュプレヒコールを日本語で叫んでいる。だが、慣れていないのかよく聞き取れず、気勢が上がらない。私と一緒に歩いているアラカン人の友人が文句を言う。もうひとりのアラカンの活動家が大声で叫びだした。すると、デモらしくなってみな元気になった。

我々は明治通りを逸れて線路の下をくぐり抜けた。神宮通りを下り、渋谷駅へと向う。その先は渋谷のスクランブル交差点だ。警察官たちは交差点で、歩行者たちを止めている。

隊列を組んだ我々は、交差点でゆっくりと旋回する。歩道で人々は完全に動きを止めて私たちを見つめている。

まるで時間が停まったみたいだった。

どんな時間停止AVよりも見事に停まったみたいだった。