彼はもともと影の薄い人間だ。飲食店に入ってもお店の人に気づかれないので、仕方なしにそのまま立ち去ることもあるくらいだ。なんだかお化けのようなのだ。
彼は今どこかに勤めているわけではなかった。会社もなければ仕事もない。これは生物的には生きているが社会的には死んでいるような状態だ。なので、彼はますますお化けに近づいてきている。
実際、私の見るところ、彼とお化けの共通点は多かった。影が薄いことと、いるかいないか分からないということはすでに述べた。
他にもある。いつも同じ場所にいるというのもそのひとつだ。見える人には見えるというのもある。ある種の霊感がなければ、彼を知覚することはできないようなのだ。
しかし、申し添えておきたいのは、彼もまた自分がお化けのような気がしているということだ。むしろ、積極的にお化けとして生きようとしている気配すらある。
朝は寝床でグーグーグーだし、学校も試験もなんにもない。そして、昼はのんびりお散歩だ。
ますますお化けに磨きがかかってきたのか、彼は、夜の墓場を会場として、運動会を開催しようと考えるまでになった。準備に取りかかると案外忙しい。なので、手伝ってくれる仲間を募っているそうだ。
私も手を上げようかと考えている。