「昔は、よく見かけたものです」と吉田一郎さん(56)は、山の斜面にある石を持ち上げた。
「こういうところにたくさんいたものですが、今は姿を見ることすら難しくなりました」とさびしそうに笑う。
吉田一郎さんが皇族の再生に取り組んで10年になる。関心を持ったのは、女系天皇の議論をテレビで見てからだ。
「皇族がいなくなるなんて思いも寄りませんでしたよ。これでは国体の護持ができないと、いてもたってもいられなくなりました」
とはいえ、皇族をどうやって繁殖させたらいいかも知らなかった吉田さん、はじめは試行錯誤の連続だった。
「うっかり宮内庁を放置したせいで、あわや全滅ということもありました。宮内庁は軟らかすぎてもダメ、硬すぎてもダメ、その按配が難しいんです」
苦労のかいあって、吉田さんの手がけた宮家は順調に増えつづけている。
「もっと皇族が身近に感じられる時代が来たら」と目を輝かせる。
吉田さんの皇族が私たちの食卓に上る日もそう遠い未来ではなさそうだ。