人生について知らなかったころ、そこには謎などないような気がしていたが、人生について知るにつれ、そこには謎しかないような気がしてくる。今からする話も、そのような謎のひとつだ。
昔、私の家の近くに、「デリー」というカレー屋さんがあった。インドの人(かネパールの人)がやっている店だった。もともとはスナックだった店舗に居抜きではいったもののようで、レストランというには狭かった。
しかし、薄暗い店内にはインドの風景写真が飾られており、雰囲気もあったし、なによりもおいしかった。
「デリー」は市役所に近かったため、その職員がよく利用していた。それで、あるとき、市役所にもっと近いところに空き店舗を見つけて移転した。
店は広くなったが、前の店のような雰囲気はなくなっていた。居酒屋の作りで、あまりインドらしくはなかった。私は新規開店してすぐに行ったが、どこか違うように感じた。当てにしていた市役所の職員も来なかったようで、いつの間にか店はなくなっていた。
この「デリー」は移転したとき、名前を改めて「ニューデリー」となった。私が謎に思っているのはこの名前についてである。
「ニューデリー」という店名は、新しい「デリー」を意味しているのだろうか、それとも以前の「デリー」とは関係なく「ニューデリー」というインドの地名にちなんでつけられたのだろうか。
店のなくなった今、もはやこの謎を解く術はない(し、どうでもいい)。