真実の記録

ブライアン

失業中の私にはもはやブライアン・フェリーになるしか選択肢は残されていなかったのだ。

しかし、どのようにしたらなれるのか。ネットを検索したら、日本ブライアン・フェリー協会というものがあり、そこで簡単な講習を受ければいいのだという。とはいえ、あくまでもそれは初級ブライアン・フェリーであり、協会認定のブライアン・フェリーになるためには、2年間のブライアン・フェリーの実務経験を経て試験に合格しなくてはならない。道のりは遠い。だが、食いっぱぐれのない仕事だ。

私は緊急事態宣言が解けるとすぐに、都内某所にある日本ブライアン・フェリー協会に向った。白い上下のスーツをまとったのは意気込みを示すつもり。ところが、その住所にそびえ立つビルを前にして私は愕然とした。日本ブライアン・フェリー協会は8階にあるのだが、エレベーターが点検中で使えないというのだ。

階段を上ると私はめまいがしてくるのでいやだったが、しかたがない。なんとか上りきって受付を済ませ、ぜいぜい言いながら講習を受けることとなった。

「この講習ではみなさんがブライアンになるために必要な基礎知識を学びます。みなさんは彼になるためには何が大事だと思いますか」

講師の言葉に受講生たちが口々に答える。「ロキシー・ミュージック!」「グラム・ロック!」「キーボード!」

私も負けじと元気に叫ぶ。「乱れがちな前髪!」

「……いろいろな意見が出ましたね……ですが、ブライアンになるために一番大切なのは……」

講習が進むにつれ、私の中で違和感がつのっていった。それもそのはず、慣れない階段で疲れ果てた私は、うっかり7階の日本ブライアン・イーノ協会に講習を申し込んでしまったのだった。

どうりで私が「乱れがちな前髪!」と言ったとき、講師が睨みつけたわけだ。