夜、無数の星々が輝く空を見上げて、畏怖の念にとらわれぬ人間がいるだろうか。
この畏怖を突き詰めると、やがて我々は底知れぬ恐怖に直面する。この宇宙の途方もない大きさと冷たさのなかでは、我々人類がどんなに助けを叫ぼうと、ただ虚空に飲み込まれていくだけなのだ。
これがアメリカの怪奇・幻想小説家ハワード・フィリップス・ラヴクラフトのいう「宇宙的恐怖(Cosmic Horror)」だ。
私の友人の文学者は、ラヴクラフトのこの「宇宙的恐怖」に触発されて、新たな文学的概念を提唱するに至った。
「宇宙的恐怖」があるならば、その対極である「宇宙的滑稽(Cosmic Funny)」もあるはずではないか、というのだ。
彼はさっそくこの概念を実作で示すべく創作に没頭した。その内容について知りたがった私に、彼は「地球は宇宙的滑稽にさらされている」という書き出しの一文を教えてくれたのみだった。
そして、ついに今日、その作品が私のもとに送られてきた。
漁村に住む人は魚に顔が似てくる、という話だった。