チュニスのメディーナにあるスーク・イル・ビルカ(Souk el-Berka)は、現在は宝石店が立ち並ぶが、かつては奴隷市場であった。チュニジアの口承文芸の「親を売る者」という物語では、少年が馬を買うために親をスーク・イル・ビルカに連れて行って競りに出す場面がある。
「みんな、新しい着物と馬が必要だ。立派な行列を作ってスルタンの御前に出られるようにな」(と寺子屋の先生が言います)。
アル・アルウィー物語集第1巻「親を売る者」
少年たちは喜び勇んで出て行きます。商人の子は帰宅して父に言いました。
「お父さん、先生がこんなことを言いました。お父さん」
「息子よ、私になにができるというのかい。昼と夜の食事を才覚するのもやっとなのに」
少年は泣き出しました。
「他の子たちはできて、どうして僕だけダメなの。他の子たちは行くのに、どうして僕だけダメなの。みんななんて言うだろう。このままじゃ僕はずっと友達の笑いものだよ」
こんな調子が、一日、二日、三日と続きまして、ついに哀れな父親は音を上げました。
「どうしたらいいか教えてやろう。外に出て私を売りなさい。私と引き換えに手にしたもので馬を買うのだ」
「お父さんを売るだって? 死んだほうがマシです」
「私を売れと言ったのだ。これは命令だ。歯向かう気かい」
そこで、少年は父親を市場に連れて行きます。当時は、ビルカ・スークでは奴隷の売買をしておりました。そこにいる競売人に「この老人を競りにかけてください」と言いますと競りの始まりです。
