読み物, Karen

ただいま禁酒中!(2)

 禁酒そのものは私はつらくなかった。飲みたくなるということもほとんどない。

 食事の時に酒はつきものだったが、今は炭酸水だ。1996年に初めてチュニジアに行ったら、レストランで普通に炭酸水が出されていて、それ以来、私はときどき炭酸水を飲むようになった。

 この習慣は日本ではどちらかというと少数派で、割るための炭酸水を除けば、高価なペリエぐらいしか選択肢がなかったし、炭酸だけ飲んでいると変わり者のようだった。

 だが、最近では、ごく当たり前の習慣となり、普通にコンビニにもおいてあるし、お酒がわりに飲む人も多い。

 禁酒の妨げの一つに、周囲との関係がある。飲み会への誘いや、飲酒の強要など、ストレスフルな状況は多い。

 ただ私の場合は、最近は飲みに行くと年下の人が多いので、飲め、と言ってくる人はいない。ただし、酒が進むと、そうでもなくなるが。

 もっとも、最近では飲まない人も増えているので、そうした先達たちのおかげで、私は酒の場ではそれほど不快な思いはせずに済んでいる。

 在日のカレンの人々ともよく食事に行く。私はずいぶんカレンの人と楽しく飲んできたので、飲まないのは少々寂しい。カレンの人も残念がる。なので、「あと3ヶ月ぐらいしたら飲むかも」と適当なことを言っていたら、「この前も同じことを言っていた」と指摘された。

 私より年上のカレン人の男性が、かつて禁酒をしていた。それが、2年ほど前から、少しだけ飲むようになった。何かの用があって一緒の食事をした時、ビールをすすめるので、「今はやめました」と答えると、いかにも感心したというふうで「私ももうやめた。これが最後」というので、こっちもうれしくなった。だが、次に会った時、彼はまたビールをすすめてきた。

 酒好きが飲まない人に酒をすすめるというのならまだしも、一滴も飲めない人が文句を言ってくるのには、不快を感じた。「そこまでして生きたいのか」と嘲笑するのだ。そうとも、生きながらえて、お前の墓の前でたらふく飲んでやる、と私は固く誓ったのだった。