難民, 読み物, Karen

ただいま禁酒中!(3)

 カレン人との飲み会について書いたが、「カレンといえば酒」とカレンの人が自分で言うくらい飲酒に寛容だ。だから、依存症の問題もよく見られるようだ。

 10年近く前になるが、若いカレン人の難民申請者がいて、静かにお酒を飲み続ける日々の果てに、ぶっ倒れた。

 私たちは新宿の病院に連れていったが、体の問題はさておき、酒をやめなければどうにもならないという。しかし、ビザのない人間が受けられる禁酒の治療もなく、どうにもならなかった。彼は結局、ビルマに帰って、シンガポールに逃げた。なんでも、そこで酒をやめて無事に暮らしているそうだ。

 20年近く前に、初めてタイの難民キャンプに行った時、教育関係の活動をしている同世代のカレン人の友人とキャンプ内を歩き回った。彼はあるキャンプのリーダーの小屋に連れて行ってくれた。竹でできたその小屋に入ると、薄暗がりの中から年配の男性が出てきたのだが、酒臭かった。ふらふらして、言っていることもはっきりしない。私たちは面会をすぐに切り上げて、外に出た。

 しばらく経って「あの人は飲んでいたようだね」と私がいったら、友人は「いや、そんなことはない。あの人は絶対にお酒は飲まない」と答えた。

 真相はどうあれ、難民キャンプ内では、前向きに生きることがなかなか難しいので、飲酒にすがる人も多いのではないかと思う。

(写真は2003年5月のメラ難民キャンプ。タイ・ビルマ国境にある)