読み物, Tunisia

ただいま禁酒中!(4)

 アルコール依存症を、お酒を飲んで暴れだす病気だと思っていたが、そうではなくて、これは単なる症状の一つに過ぎないようだ。また、朝から飲まないから依存症ではない、というわけでもない。依存症の人の中には何年も飲まなくても平気な人もいるのだ。

 いろいろな話をまとめると、アルコール依存症とは、長年のアルコールの摂取によって脳が変質し、その結果、ある種の「スイッチ」が形成されることのようだ。このスイッチは、アルコールの摂取とある行動を直接的・強制的に結ぶ。すなわち、アルコールによってある行動にスイッチが入り、それを止めることができないのである。スイッチが入ると、暴れる人もいれば、静かに飲み続ける人もいるが、スイッチができたという点では同じなのである。

 私の友人で、同い年のチュニジア人男性がいて、依存症なのだが、一口飲んだだけで表情が一変したのには驚いた。それまでこわばっていた彼が一瞬にして人間らしさを取り戻した。スイッチが入って、人間になったのだ。もう素面では人間ではいられないほどの状態ということだろう。

 彼はまるで酒でなくては咲けない花のようだった。さすがのSMAPもこの花を「Only One」にするくらいなら、No. 1になったほうがマシだと歌うことであろう。

 それはともかく、去年のチュニジア訪問では、この彼は私にかこつけて「そうさ僕らも」といわんばかりに飲み出した。それで、彼の家族が激怒して、私は彼の家で調査をする予定だったのだが、できなくなってしまった。

 アルコール依存症の人がいる家庭は、その依存の程度がなんであれ、つらい。私は無責任なことをしたものだと反省し、今年の2月末にチュニジアに行った時は、彼に連絡を取らなかった。

チュニジアのビール「Celtia(セルティア)」(チュニスのレストランで)