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ただいま禁酒中!(5)

 禁酒をしている人のブログを見るのは、気を紛らわせるのにちょうどいい。また、禁酒というのは人によってさまざまだから、いろいろな人が経験を残しておくと後に来る人の役に立つ。

 しかし、ブログはたくさんあるわけではないので、しばらくすると見尽くしてしまう。たくさんあれば、なにかと励みにもなると思うので、私もささやかながら自分の経験を書いている。

 さて、これらのブログには、たいてい禁酒のメリット・デメリットが書かれている。しかも、たいていデメリットはないとされる。デメリットは確かにないと思う。また、多くの人の言う通り、メリットもたくさんあるだろう。だが、私にとってはこのメリットは少々微妙である。

 よく言われるのが、禁酒すると痩せる、ということだが、私は間食が増えたので、むしろ太った。また、肌がキレイになるというのもある。もしかしたら、そうなのかもしれないが、50の男の肌がきれいになっても誰も心動かされまい。

 節約になる、という人もいるが、これは今まで無駄に使っていたお金が減るというだけのことで決して「節約」ではない。そんなこと言うなら、飲みすぎて早死にしたほうが、完璧な節約になろう。死んだらお金は使えないので。

 また、私のように、「酒に使っていた分だからいいか」などとウキウキ気分で浪費して、かえって出費が増えるという愚か者もいる。

 健康になる、というのもあるが、飲酒自体が不健康なことであるとすれば、これは当たり前のことだ。そもそも、飲酒以外にも不健康になる要因はごまんとあるのだから、肝機能の改善というピンポイントの目的がないかぎり、禁酒に健康一般をお任せするのは無理というものだろう。

 時間が有効に使える、ということをメリットに挙げる人もいる。確かにそうかも知れないが、私としては「いまさら時間を有効に使っても」という気もしないではない。むしろ、その有効な時間が、これまでいかに時間を無駄に使ってきたかの後悔の時間になっているぐらいだ。

 そう考えていくと、結局、私にとっては、禁酒のメリットとは、禁酒自体以外にないように思える。飲まなくてよい、というのは、非常に気が楽だ。これは飲んでいた時には気がつかなかったことだ。

 禁酒して人生がうまくいけば大いに結構だが、たとえうまくいかなくても、この気楽さだけは確保できれば上出来ではなかろうか。

チュニジアのレストランのお酒のつまみ。