言語, 日本語

ガールズバーで飲みたい放題(2)

 「飲みたい放題」について考え続けた私は、ついに重要なヒントたどり着いた。

 それは、「〜し放題」が場所・状況についていわれるのに対して、「〜たい放題」は、常に人についていわれるということだ。

 つまり、「あの人は病気なのにいつでも飲みたい放題だ」とはいえるが「あの人は病気なのにいつでも飲み放題だ」はおかしい。これだとその人が飲み物になってしまう。

 「飲み放題」は、「この店は飲み放題」「このコースは飲み放題だ」などというように店やサービスについてにしか使えないのだ。「1000円で飲み放題」ということもあるが、これもやはりサービスであろう。

 そして、先に挙げた「あの人は病気なのにいつでも飲み放題だ」も、実は「あの人は病気なのにいつでも飲み放題コースを選ぶ」という意味ならいえるのだ。

 これで、あの看板の違和感も説明できそうだ。

 つまり、本来は人に使うべき「飲みたい放題」が、あたかも店を表す表現であるかのように看板で使われているから、おかしく感じられるのだ。

 それでは、この看板の「飲みたい放題」は間違いなのだろうか。

 そうとは言い切れない。

 考えてみれば、ガールズバーは普通の居酒屋とは違う。もしかしたら、このガールズバーのガールズたちは「居酒屋ほど堂々たる飲み放題ではないけど、お客様の気持ちを満たせるようなせめてもの「飲み放題」を提供したい」という奥ゆかしさから、この耳新しい表現を採用したのかもしれない。

 この推測は正しいだろうか。

 それを知るためには、どうやら、この店のガールズたちに直に教えを乞うほかないようだ。

Twitterで#飲みたい放題で検索するとガールズバーが出てくる。
しかも、この店は私が取り上げた店とは違う店だ。
もしかしたらガールズバーで「たい放題」革命が密かに進行しているのか……
調査報告が待たれる。