真実の記録

不壊なるもの

仕事を首になり、行き詰まった私は、なけなしの金を払って、あるセミナーに参加することにした。心の糧となるようなメッセージが聞けるというのだ。私は、もしかしたら立ち直るきっかけを掴めるかもと、期待を抱いて会場に赴いた。

講師を務めるのは、50代の落ち着いた男性で、どことなく超然とした雰囲気を漂わせていた。彼のスピリチュアルな講話が、今、世間で感動の渦を引き起こしているのだった。

そして実際その通りだった。彼の話は世俗的でありながら、宗教的であり、あけっぴろげでありながら、秘義的だった。彼の引き起こす笑いは涙であり、その悲しみは、朗らかに輝いていた。私は感動に震えた。

彼のメッセージの核心は、魂は不壊なるものだということであった。

「我々の魂は、聖なるものだ。傷つけられることもなければ、損なわれることもない。だから、どんな試練に遭おうとも、恐れてはいけない。いかなるものもあなたの魂に触れることすらできない。どのような苦難の中でも、あなたは決して失われないだろう。なぜなら、あなたの魂は不壊なるものだからだ」

この確信に満ちた言葉に人々はあられもなく泣き、そして、私もあふれ出る涙をどうすることもできなかった。人々は、彼の話を聞く前には気づきもしなかった事柄に出会えたことを心から喜んでいた。

ひとりの男が感極まって立ち上がった。彼はある企業を経営していると語り、今日の集会に参加したことで、その経営の苦しみや悩みがすっかり消え去ったと断言した。晴れ晴れしい表情だった。

「私の会社は、今、深刻な経営危機にあります。立ち直るためには、たくさんの従業員を解雇しなくてはならないのです。それが、私の苦しみでした。ですが、今日、先生のお話を聞いて、決心できました。リストラを敢行します! なぜなら、どんな試練も従業員たちの魂を傷つけることができないからです。ああ! 安心して解雇できます! どんなに路頭に迷おうとも、彼らの不壊なる魂は決して迷うことなどないのです!」

彼はその場で分厚い財布を開き、札束を取りだすと、「これはほんの、お気持ちまで」と講師に渡した。そして、講師はやさしく笑ってそれを受け取った。