「悪魔を憐れむ歌」はローリング・ストーンズの代表曲のひとつだ。
ストーンズの活動は長いが、この曲を冒頭に置いた 1968 年のアルバム『ベガーズ・バンケット』から、1972 年の『メイン・ストリートのならず者』までの 5 年間が、このバンドのもっとも創造的な時期であったことに異論を挟む人はそうはいない。「悪魔を憐れむ歌」はそうした時期を象徴する一曲だ。
この曲の英語のタイトルは「Sympathy for the Devil」というもので、sympathy に「憐れむ」などという意味はない。だが、これ以上の邦題はなかなかないだろう。
歌は「自己紹介させてくれ」という男の言葉からはじまる。そして、誰も「どうぞ」とも「ぜひ」とも言っていないのに、自分はイエスの磔刑に居合わせたとか、ロシア革命やケネディ暗殺の現場にいたとかいう自慢話を並べ立てるのだ。そして、そのたびにしつこくこう聞いてくる。
「私の名前を当ててごらん」と。
いや、当てるもなにも、曲名を見れば、誰だかすぐわかる。そんなことも気がつかないウカツな悪魔に私は、憐れみどころか軽蔑すらおぼえるのだ。