真実の記録

喉の自慢

最近、映画やドラマで残虐な場面やハラハラさせるような場面を見るのがつらくなってきた。

指を切り落とされたり、目をくりぬかれたりする場面が来ると、私はそのまま消してしまうのだ。

こうした傾向が高じて、最近では、思いも寄らぬものが私を脅えさせるようになった。

例えば、『魔女の宅急便』でトンボが乗る大きなプロペラつきの自転車がそれだ。あのプロペラのそばにうっかり入り込んだらと思うと、もう見ていられない。「私はげんきです」というわけにはいかないのだ。

これは年のせいだろうか。思い出されるのが、『NHKのど自慢』を好んで見ていた祖母のことだ。まだ十代だった私はこんなもののいったい何が面白いのかまったく見当もつかなかった。

しかし、今になってみると、祖母の気持ちがわかるような気がする。『のど自慢』には残虐な場面がいっさいない。ただ出場者が歌って、それに鐘で判定が下されるだけだ。これが老人たちの気弱になった心にちょうどいいのだ。もちろん、多少はハラハラさせるところもある。鐘は1回しか鳴らないのか、それとも合格を告げるのか。しかし、これは、最小限のサスペンスだ。

もしこれが、鐘が1回しか鳴らなかったら手足を切り落とされるとか、音程を外したら煮え湯を飲まされるとか、歌詞を間違えたら目隠しされて銃殺されるとかだったら、どうだろうか。おそらく老人たちは『のど自慢』など見ないに違いない。