難民, 入国管理局, 東京入国管理局

おもてなさぬの品川入管記(7)

 入管としては、もうこの質問表と引き換えに感謝状を差し上げたいぐらいだろう。自ら「偽装難民」と名乗り出てくれるわけだから。しかし、その感謝状の裏を見れば、しっかりと強制退去令が……という次第だ。

 ならば、このげに恐ろしき質問票にどう書いたらいいのだろうか。正解はもちろん、自分の難民性に関係することだけ書く、だ。

 「当該活動」をやめざるをえなかったのは「私は難民だからです」で十分だ。これは詭弁でもないし、嘘でもない。そもそも、難民でなければ日本になんか来なかったのだから。

 さて、紙を一瞥するや否やこれらの事情を瞬時に察した私は、素早く2人のアラカン人を制止した。ペンを握った2人はビルマ語の丸文字をすでに書き連ねていたのだ。

 「待ちたまえ! そこは難民の理由だけを書くのだ。うむ、消せばなんとかなる! で、いったいなんて書いたのかね?」

 「『私はアラカン州で命の危険があるので逃げてきました。難民です。』と書きました」

 「あ、そう」

 なに、わかってんじゃない。俺が口を出すまでもないのさ……。

 女性職員が紙を回収に来た。私が日本人だと知ると、私の身分確認もする。まもなく、男性のほうが呼ばれたが、すぐに戻ってきた。在留カードの住所変更をしていないので、受理できないのだという。

 次に呼び出された女性のほうは、無事に受理されて、11:30-12:00に再度呼び出しますという札をもらっている。

 ちょっと時間ができたので、私はこの間に仮放免保証金の還付手続きをするために4階の会計窓口に行った。20分ほどで済まし、10万円の小切手を受け取って再び3階に戻る。

 もう女性の手続きも終わっていた。後は、2階のBカウンターで技能実習ビザの変更手続きをするだけだ。しかし、もう十分だろう。私は2人を置いて入管を後にし、小切手を換金するために田町の銀行に向かったのであった。