難民, 入国管理局, 東京入国管理局

おもてなさぬの品川入管記(6)

 この質問票は、日本ですでに何らかの在留資格を持っている人を対象としている。だが、永住者や配偶者ビザの人が難民申請をすることはまずない。念頭に置いているのは、留学生や技能実習生だ。つまり、この2つのカテゴリーの人々の申請が増えたがための質問票だ。

 そんなわけで、質問1の「現に有する在留資格に該当する活動(以下「当該活動」といいます。)」の「当該活動」とは「留学」もしくは「技能実習」となる。

 この「当該活動」を行っている場合、「はい」と答えてそれで終わりだ。だが、大抵の場合、申請者は学校を辞めるか、技能実習先を出てしまっている。したがって、ほとんどが「いいえ」となり、残りの質問2と3に答えなければいけないことになる。

 質問2はこんなものだ。「あなたが当該活動を行わなくなったのはいつからですか。」 これは、留学生の場合なら「学校を辞めた日付」、技能実習生の場合なら「実習先をためた日付」を書けばよい。

 問題なのが「3」だ。これがひっかけなのだ。留学生なら例えばこう書くかもしれない。

 「まともな授業が行われていなかったから」
 「学費が払えなかったから」
 「アルバイトができなかったから」
 「周りの学生のビザが出なくて不安になったから」

 技能実習生なら例えばこうだ。

 「来る前に聞いた話と異なるから」
 「給料から何万と差し引かれるから」
 「不当な扱いを受けたから」
 「ハラスメントを受けたから」
 「危険な仕事だったから」

 いやはや理由はごまんとある。

 だが、これらの回答はすべて間違いなのだ。0点だ。なぜなら、難民であるかどうかの問題とはまったく関係ないから。

 むしろこれらは、入管が、難民認定をしないための材料にしかならないという点で有害なのだ。つまり、入管はこれらの記述をもとに、留学生ならば「学業を怠って逃げた結果難民申請をしたにすぎない」、技能実習生ならば「実習先を逃げ出して難民申請をしたにすぎない」というお好みのストーリーをたやすく作り上げることができる。「連中は偽装難民だ!」と。だからこその「この質問票を私の在留審査の資料として使用しても構いません」だ。これが味の決め手だ!

 しかし、驚くべきことだ。「偽装難民」を生み出しているのは入管だったのだから。入管がメディアと一緒に盛んに喧伝しているあのイメージ、つまり、自分たちが「偽装難民」の軍勢に包囲され、いまにも陥落せんばかり、というあのイメージの背後には、こんなカラクリが隠されていたのだ。