品川入管の「きびしさ」を噛みしめた私たちであったが、さらにそのきびしさを思い知ることになった。
申請カウンターは廊下に開いた扉の中にあった。だが、その前は人でいっぱいだったのだ。諸国の民が殺到してた。廊下の両側には椅子が並べられている。だが、どれも埋まっていた。みんな、くたびれた書類を手にうなだれている。立って待っている人もいる。
難民の椅子取りゲームだ!
私はどこに取り付いたらいいのかわからない。椅子を狙えばいいのか、扉の前にたむろしている人々の中に入ればいいのか。
いや、立っている人たちは椅子に座るのを待っているのかもしれないぞ。しかし、列は両側にある。もしかしたら、こっちの椅子の列は申請が終わって呼び出しを待っている人用なのでは。うっかりそんなところに座りでもしたら、1日待っても呼び出されない。
私はカウンターに入って、職員たちに聞こうとする。職員たちは対応中で、相手にもしてくれない。「外で待っていてください」と追い出される。
ふと壁を見ると、張り紙が。「お困りの方はご相談ください」と入管の電話番号が書いてある。バカバカしいが、私はそこに電話してみる。
「どこで待てばいいのですか」
「受付で聞いてください」
埒が明かない。
その時壁際の椅子がひとつ空いた。私は冷静に注視する。反対側の壁際の椅子から移動してくる人はいない……となると。
今だ座れ!
私はその椅子を占拠する。と同時に、周りの難民申請者たちを睨みつける。割り込みをしたという文句を封じるのだ。「おもてなし」なんかくそくらえだ。
しばらくするともう2つ空く。壁際に立っていた2人のアラカン人を呼び寄せる。
どうやら誰も何も言ってこない。とりあえずここにしがみついて何が起きるか待つのだ。
