酒を飲まない人が飲み会に参加するのはなんの問題もない。だが、二次会となると話は別だ。二次会においては飲む人と飲まない人はもはや違う人種となる。ちょうど北方領土をめぐる我が国とロシアの見解のように、決して交差することはないのだ。
以前よく飲んでいた2人と、食事に行った。食事も済んで、居酒屋でゆっくりということになった。私も習慣でついて行った。
居酒屋であれこれ頼んで飲み始める。レモンサワーが280円で安い。どんどん飲んでいる。酔いが回ってきて、2人とも乱れ始める。私はもちろんソフトドリンクなので酔わない。同じ時間を過ごしていて、2人はどんどん変わっていくのに私はまったく変わらない。私は不老不死の時の旅人だ。
さらに酔いが深まり、私はもう2人が何をいっているのかすらわからない。人間がとことん酒を飲むとどうなるか観察しているような気になる。
2人のうち1人は酒でよく失敗をする。電車の中で酔い潰れて、家に帰れないこともしばしばなのだ。私は忠告すべきではないだろうか。もうやめて帰ろう、と。だが、酔って吠えまくっている彼にそんなことを言えるだろうか。
そのときだ。目の前で繰り広げられる狂態、2人のどちらかが立ち上がるたびに割れるグラス、そのただ中であの声がついに響き渡ったのだ!
「ドリンク、ラスト・オーダーでーす!」
よし、これで切り上げられる! だが、その瞬間「レモンサワー3杯ずつ!」との声が……
Wikipediaによると、絶大な権力を掌握していたスターリンは、自分は飲まずに「部下が酒に酔い潰れるのを見て楽しん」でいたという。そうだ、私ももう楽しむしかない。この悪魔的な楽しみに酔うしかないのだ。フルシチョフが批判に立ち上がるその日まで……
そして、確かにその後、この悪魔的行為のしっぺ返しにより、私の権威は失墜したのだ。帰りの電車の中、人々が見ている前で、泥酔した友人に何度も熱烈に抱きしめられるという辱めを受けて……
