Semantic Change of the Verb wallaː of Tunis Arabic

アラビア語チュニス方言では、動詞 wallaː には、おおまかにいうと3つの意味がある(モロッコ方言などでもほぼ同じ)。

①向かう、戻る(移動)
②〜になる(変化)
③ついに〜になる(出来事が最終的な状態に至る)

1950〜60年代に書かれたチュニス方言の物語テキストには、①の移動の意味はほとんど出てこない。しかし、1980年初頭にドイツ人の学者が集めた物語テキストを読むと、やたらと①の用法が出てくる。②の用法はどちらも同じくらいだ(現代の用法の割合はわからないが、基本的にはやはり②の意味が多いようだ)。

そこで、昔は①の意味が多かったが、これが消えて、だんだん③のほうが増えている、という歴史的な意味変化が想定できる。とはいえ、変化というには時代が隔たっていないし、今のところ他の資料がないのでそこまでは言い切れない。しかし、①>②>③という方向での意味の変化は読み取れそうだ、という内容。

*ドイツ語のテキスト:Hans Stumme, 1893, Tunisische Märchen und Gedichte : eine Sammlung prosaischer und poetischer Stücke im arabischen Dialecte der Stadt Tunis; nebst Einleitung und Übersetzung.

*ベルリン自由大学、ドイツで開催された Semitic Dialectology Conference Cutting-Edge Research in Semitic Dialectology: Bridging Theory and Practice で 2025 年 6 月 11 日に発表。

*なおこのときの様子を書いたものは以下の通り。
Semitic Dialectology Conference
セム語方言学
AKI’O NAKANO